まだ若い担当医に言われるがままに、楽になるのならばとそれに同意した。
今までの点滴に加え、新たに薬が追加された。
どうやら、効果はあったようで身体が軽く楽になってゆく。
しかし、投薬されてからしばらくすると、何か強烈な腹部の痛みと便意が襲って来た。ナースコールを押すが、急な便意に我慢出来ず、自力でトイレへ向かおうとベッドから立ち上がる。そこに看護士がようやくやって来た。
「何やってるんですか!」何をって、トイレに行きたいのだ。
「大丈夫ですか!」
もう一人、ナースコールに駆け付けた若い看護士は「キャー!」と悲鳴を上げる。「いちいち大袈裟なんだよ」と思いながらトイレへ向かおうとするが、尻のあたりに違和感がある。いつの間にか着替えさせられていた浴衣の様な院内着を見ると血に塗れている。
「あれっ」と思い尻の部分をめくってみる。
さっきまで感じていたのは便意だったが、そうではなかったらしい。
汚い話だが、肛門から血液の様な液体が一筋の噴水のように出ている。さっき、叫び声を上げた看護士を見るとその飛沫で看護服を汚していた。
「何だこれは」と思っていると、担当のまだ若い医者が入ってくるなり小声で言うのが聞こえた。
「やっぱり、だめだったか」。
僕は耳を疑った。
「なんだと!?やっぱりってどういう事だよ!?」
と、叫びたいのだが急激に血の気が引いて声にならない。
「ちょっと、まだ無理みたいでしたね。お薬、変えますね」
などとと冷静な顔つきで続ける。
ふざけるな。人体実験かよ、新薬とやらの。
おかげで病室内はまたも大騒ぎだ。
いつの間にか眠っていたらしい。気がつくと、母がとなりで座っている。
「あんた、駄目じゃないの。何やってんの」
ああ、さっきの事か。
「ちょっと、居ない間に。まったく」。
反論しようかとも思ったが、さっきの醜態を思い出したくもないので止めておく。
「あとで、CTとか脳波とか詳しい検査をするからって、先生が言ってたわよ」。
検査?
まずい。
僕はキ○ガイか何かと疑われているのだろうか。
2010年6月14日月曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿